ソフトランディングしそうでしない?!

会長からついにダメ押しの「納得はいかないんだったらさ、辞められたらいいんじゃないですか」という言葉が出ました。私としては、ここまでこじれた会社に残りたいなどという気持ちは微塵もありません。たとえ営業局への異動が取り消されて、編集に残れるということになっても、この会社のために働く気にはなれないでしょう。ただ、自己都合で辞めるのだけはどうしても嫌でした。なんとか上手く話を持って行って、「会社都合」で辞める形にしたいと思って、すっとぼけたりしていたのですが、私もついにすっとぼけることができなくなりました……。

気づくと「いや、でも自己都合で辞めるのは、いやです!」と唸るような声で言っていました。

会長はやっと話が動き出したという感じだったんでしょう。「ああいいよ、会社都合だっていいよ、別に。そんなのにこだわってませんよ、私は」と、鷹揚に構えているような返事をしてきました。しかし、子持ちママさんも、おっちょこちょいな人も「会社都合にしてほしい」とお願いしているにもかかわらず、会長が「解雇撤回したからな~~」と渋っている話は聞いています。さすがはタヌキおやじです。

私も「そうなんですか?みんな、『会社都合でお願いします』って、かなり言ってたと思うんですけれども」とカマをかけてみました。

会長「言ってたと思うよ。でも本人たちが、『自己都合でいいです』っていったんだから」、私「まあ、□□(子持ちママ)さんはどっちでもいいと言ってましたけれど」、会長「○○(おっちょこちょいな人)さんもそうですよ」、私「いや、○○(おっちょこちょいな人)さんは『会社都合にしてもらえないか、一応、検討して欲しい』ってお願いしたと思いますけれど」、会長「彼女もわかってはいたと思いますよ」と、またまた押し問答に・・・・ (^^;;

しかし、おっちょこちょいな人から「今回の話は、どう考えても会社都合だと思うんですよね~~」とランチの時にグジグジ言っているのを聞いていた私は、この話を引っ込める気にはなれず、「いや、つい一昨日も、お話されたかと思いますけれど・・・・」と聞いた話を再現しようとしたところ、「いや、それは本人と決めたことですので、あなたには関係ないじゃないですか」とごもっともなことを言われw、私も「もちろん関係はないですけれど」とこの話を終わりにしました。子持ちママさんも、おっちょこちょいな人も、会長との正面衝突はめんどくさいから避けたい・・・・ということで、結局は「自己都合」を言い出しているので、もう自分で交渉してもらうしかないかな、と思い直しました。

会長「私は別に(自己都合か会社都合かには)こだわってませんよ」となおも言うので、私も「そうですよね。○○さんの件については検討していただいて・・・」と答えました。

これで収まったのかな?話が折り合ったのかなと思いきや、会長の方にもまだ自分が被害者だという気持ちがあるようで、「もうさっきもね、信用できないって言われたんだから、私はもうとっても信頼関係はないと思っています」といい始めました。私も「いや、この状態で信頼関係は難しいでしょうね、お互い」と言い返しました。信頼をなくすようなことをし始めたのはどちらなんだ?という状態です。しかしもう、今さらそこをほじくり返してもむなしいだけでしょう。

会長「だったら、お互い時間の無駄ですよ」、私「もちろん・・・」、会長「会社都合でいいですよ」、私「そうですか。じゃあ、会社都合にしていただいて、申し訳ないですけれど、『法定』の有給休暇が……私にはそんなに残ってないんですけれども、あと7日間ありますので、そちらを消化させていただきたいです」、会長「ああ、いいですよ。7日とっていいですよ。昨日から取っていいですよ」となりました、が!!

なんで普通に出勤している昨日の分から有休消化に入れるんだよ!会長が疲れちゃってボケ始めているのかもしれないw

私「昨日は来てますんで、すいませんけれど」と答えると、すぐに「じゃあ、明日から」と会長はすぐに自分のボケに気づき、残り7日の有休をとった上での退職日がいつになるのかを、カレンダーを見ながら一緒に確認しました。しかし、会長はまだまだ文句を言い足りないようです・・・・

言いたいことは言ってやる!

私が新卒で入った会社は通販会社でしたが、某セゾングループの一員だったせいか、営業会議の段階で、最後の営業総利益までキッチリと出していました。ひとつ前の某業界誌の出版社も、普通の会社組織とはちょっと違う形態だったためか、決算の時にはかなり細かいところまで数字を出していました。

ところがこの出版社は、会長が1人でやっているようなものですから、会長と経理のモグロさん(1年ほど前に入社した40代の男性。入ったその日に会社都合退社の取り付けを目指しはじめたというw)しか、決算書を見たことがないんだろうと思います。

会社に来たこともない会長の奥さんをはじめとする会長一家役員報酬を得ており、その減額もないまま今回の解雇劇です。会長の自宅も社宅としているそうですから、細かく数字を出しはじめたら、ホコリがモウモウと立ち上るに違いありません。

だから、会長側から赤字の根拠なんて出てくるわけはないので、私はこの直前の三連休に、赤字の根拠とされるものを突き止めるため、チーフ会議で配られた昨期の収支表1年分を、自宅のパソコンのエクセルに打ち込みまくっていたのです。

私「決算書を出して欲しいということです」、会長「そんなものは出せませんよ!」、私「私は自分で、この会社の書籍の赤字がどんなものなのかを知るために、昨期発行された出版物すべての差し引き収支と、2016年9月までの清算後注文数をもとにした売上高を、一覧表にして全部出してみたんです。……それで、会長がおっしゃっている赤字????万円というのは、清算時の差し引き収支の話ですか、それとも清算終了後の注文も入れたものですか?」会長が適当な数字を言って、解雇を正当化しようとしてないかを見るために質問してみました。(もちろん、赤字額が正しくて、それが私たちの部署のものだとしても、解雇は正当にはなりません)

会長は「清算時点です」と答えました。どうやら適当な数字を言っていたわけではなさそうでした。私「まず、私たち書籍部は、好き勝手に自分たちの作りたい本を作っていたわけではなく、トップダウンで作った本がかなりあったということです」、会長 「うん知ってるよ。知ってますよ、そんなことは」、私「それで、赤字の中でトップダウンで作った本が、どれぐらいの割合を占めているかを調べたんですけれども、会長がトップダウンで下したものが3割、前社長がトップダウンで下したものが3割、ですから、6割がトップダウンでくだされたものだったんです。残り4割の私たちが独自で企画した本も、当然社内で了承を得て、原価計算をした上で『これで行ける』と判断された企画です。それが結果として赤字だったのは、私たちが反省すべきなのは当然ですが、だからといって一方的に私たち4人だけが責任を負って、しわ寄せで辞めさせられるのは、全然納得がいかないですし、その後、さらに一方的に解雇撤回されて、配置転換だということで、自分のキャリアとは全然違う部署に異動させるというやり方は、まったく納得いかないですよね」

とりあえず、言いたいことはだいたいここで言ってやりました。

会長「納得いかないんだったらさ、辞められたらいいんじゃないですか」。会長は、こちらの言っていることが正しかろうが、言いがかりだろうが、とにかく辞めさせたい一心だったのです。

自己都合退職の崖へと詰め寄られた

会長は呆れたように「なんで、ここまで書かなくちゃいけないの」と言いました。素っとぼけるつもりはありませんが、こんなところで自己都合で辞めたくはないので、なんとかやんわりとお茶を濁したいと思い、「え?私、そんなにひどいこと書きました?」と答えました。

会長「書籍部門業績悪化のためって書いてあるでしょ」、私「あ、でもその通りでしたよね?」、「その通りですけれど、あなたは会社に残る人でしょ。それなのに、会社のマイナスになるようなことを書くなんて」ともっともなことを会長は言い始めました。それは、きちんと納得のいく異動であればそうですが、こんなやり方をされて、「会社のためを思って」引き継ぎメール書く人なんて、世の中にいるんでしょうか??もともと会社のマイナスになるようなことを始めたのは、会長の方なのに。

会長「みんな心配して来てるんですよ」、私「そりゃあ、心配すると思いますよ」、会長「だから、そういう書き方したんだよ」、とぼけようとする私に少しイラついたのか、会長もちょっとドラマの取調官みたいになってきましたw

私もまた少し激してきました。「そりゃあ、心配もされるでしょうよ。元々は解雇で、そこから、訴えられないように解雇を撤回して、その上で編集者を営業に異動ですから」、「じゃあもう、あれですよね。会社も私も信用してないわけだよね、もはや。今も言ったでしょ」と会長に、自己都合退社の崖っぷちへ詰め寄られてしまいました。

ここで、まださらにやんわり返そうと試みますw 私「信用してないというか、それは辞令への返信メール(3/17に出した、一連の一方的な流れに承服できない旨)に書いた通りです」と答えました。

しかし会長は、さらに詰め寄ってきます。というか、もうとにかく私を辞めさせたかったんでしょう。「私を信用してないならさ、この会社にいる必要はないと思いますよ。なんでいるんですか?」、私「それは、おかしくないですか?解雇から撤回にして、一方的に異動させて」、会長「そりゃしましたよ」、私「こちらの話を聞くこともなく」、会長「だってさ、答える必要ないじゃないですか、撤回したんだから」、私「いやいやいや」、会長「撤回したんですよ」、私「いいえ、説明責任はありますよ、あります」、会長「会社の状況は赤字ですよ」、私「それは知ってますよ。だから、それがどのような赤字で、どうして私たち書籍編集部だけが解雇にならざるを得なかったのか、きちんと説明して欲しいです」、会長「その資料を全部出せっていうんですか!」、私「そうですね」、会長「そんなものは出せませんよ!」

まだまだ攻防は続きます。

問題の発端は引継ぎメール

ここからは、証拠を残すために録音した会長との会話を、他のメンバーにも参考になるよう文字起こししたものから抜粋した実録を交えてお送りしますw

会長は手にしたメールのプリントアウトを見ながら、さらに続けました。

「A社があなたからのメールを見て、びっくりこいたって言って」

「へえー、でもそうですよね」私もまだなにが問題なのかわかっていません。

会長はすこし怒気を含んで「そうですよねじゃないでしょ。辞める人ならいいですよ、こういう書き方をしても。でもあなたは残るって言ったんだから」と言いました。私は「残る」と言ったというよりも、残らざるを得なかっただけで、それは今回、こんな滅茶苦茶なやり方をした会長のせいだと思っていますから、この一言に少しプチッと切れて、「じゃあ、こういう場合の文例を提示してくださいよ」と言い返しました。

すると会長は、「少なくとも、あなたが言っているのは、会社に残る人の発言じゃないですよ。自分で分かりませんかね」と言ってきました。

ここで、またさらにプチッと切れて「私、こういった目にあったことがないんで、ちょっと分かりません」と返しました。

私がA社を初めとして、引き継ぎ先を知らせるために出したメールはこんな感じです。

「拝啓 早春の候、貴社ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。突然ではありますが、この度、書籍部門業績悪化のため、2017年3月20日をもって株式会社○○○○○○○書籍編集部は解散となりました。また、上記に伴い、私、○○は営業局販売部に異動となりました。「○○○○(書名)」書籍編集の折には、ひとかたならずお世話になり、深く感謝申し上げます。

 今後、発行点数は少なくなりますが、手芸関連を中心に書籍の発行は続けていくようです。書籍の企画・編集の方は、弊社代表取締役 ○○○○が引き継ぎさせていただきます。今後は、以下のメールアドレス、または電話番号までお問い合わせをお願いいたします。」

これは、解雇を言い渡された直後に、ネットで検索して見つけてきた文例をもとに作成しています。本当は「業績悪化」などとは入れないほうがよい、というのも見ていたのですが、そのときには「解雇になるのだから、有り体に・・・」と思ってこの文章にしたのでした。あれから約1ヶ月が経ち、解雇ではなくなったのですが、こんな状況で会社に対して気を使う気も起こらず、「業績悪化のため」としたまま各社に送ったのでした。まさにこの部分が問題になったということです。

会長「ひどいですよ、これは」 私「いや、ひどいというのは」 会長「会社だって言いたいんでしょ」 私「会社だというよりは、会長だと私は思いますけれど」

こんな応酬をしました。会長は「会社なんだから仕方がない」と言いたいのでしょうが、こんなにひどい対応をするものは「会社」とは言えません。それに、私たちはずっと「対 会長」で交渉をしてきたのですから。

「こちらが真剣に、今回の一連のことについて説明してほしいと時間を割いて質問しているのに、それには一切答えずに、一方的に解雇だ、撤回だと。それはとてもひどいことだと私は思いましたけれど」と会長を睨みつけながら話しました。私の咳がぶり返していたため、マスクをかけていたので、目だけで訴えなくてはならなかったのです。

会長は「それはあなた方が、会社の事情を知らない弁護士なんかに相談しているから、そういうことになる」と答えました。「会社の事情を知らない弁護士」と言われて、カリスマさんの弟弁護士のことを差しているのは分かりましたが、解雇を通告されて、会社の事情を知っている、つまり会社側の弁護士に相談する社員がいるんでしょうか?意味不明です。普通なら、社員がそういうところに駆け込まないように、経営者がきちんと手順を踏むべきなのに、こちらのせいにしているところに呆れました。

私は「会社の事情を知らない弁護士なんて、私は知りませんけれど、会ったことがないので」と答えました。確かに、弟弁護士のフルネームを知りませんし、会ったこともありませんでしたw

会長は「だって、それならなんでさ、書籍部はなくなったのに、カラオケ雑誌では募集をするんですか、とか言うわけ?」と聞いてきました。一つの部署を丸ごと解雇しておいて、他の部署で新たに人を募集しているなんて、そんなの誰が聞いてもおかしいと思うに決まっているのに、そんなことも分からないようでした。

私「それはネットで調べればすぐわかるので。あと、労働局とか労働基準監督署とかにも、当然相談に行きましたから、わかりますよ、それは」と答えました。

会長「とにかく、あなた方は・・・」

私「だって労働者の方が当然弱いんですから、使用者の方が強いんですから」

会長「今は労働者の方が強いですよ」

私「いや、そんなことはないです。私たちはこの1ヶ月、どうなるのかと・・・」

会長「それは会社によって違いますけれど」

私「いいえ、それは詭弁だと私は思いますけれど」

こんな感じで、相手の言葉にかぶせるような激しい応酬になってきました。私の発言も、なんだかちょっぴり某ユニオンに感化されているかのようになってしまいましたw

一方、打ち合わせ室の様子を社内で伺っていた書店営業の前田さんは、メンバーへのラインに「打ち合わせ室で会長と前田(私の名前)さんがモメている!」と流します。すると、この日会社に来ていなかった他のメンバーも「なにを話しているのか」「大丈夫なのか」と心配してくれていました。

 

このまま穏やかに時が流れるはずもなかった

ついに1人になってしまった

配置転換の上で、会社に復帰して以来、毎日が緊張状態のようで、やはり22日の夜も動悸が気になってなかなか寝付けず、23日の深夜1時半ごろにようやく寝付いたのですが、2時間後の3時半に咳き込んで目が覚めてしまい、それきり眠ることができなくなってしまいました。しかし、どうせ会社に行っても仕事はほとんどなく、各所に引継ぎメールを送るだけでしたので、日中に眠くて集中できないとしても、大して問題にはならない状態でした。時間があるので、これまで書籍のネタ探しのために集めてあった記事を、やっと落ち着いて読める状態になり、なんとも皮肉なことになっていました。

それでも、23日の日も普通に編集局タイムで出社しました。その日はついに、書籍編集部には私だけが出社している状態になりました。カリスマさんは自ら選んで解雇されている状態ですし、子持ちママさんも代休と有休を使って、もう1日たりとも出社せずに、4月の締め日で自己都合退職するということで話がつきました。おっちょこちょいな人も、出てきたり休んだりを繰り返しながら、4月の頭にはフェイドアウトです。

本当に、この誰もいなくなった書籍編集部の席に私1人が残ったまま書店営業へ出かけていくなんて、現実味がないなぁ・・・・という思いにとらわれていました。同じシマに期間の小動物雑誌の編集長さんとアシスタントの女の子がいましたが、実は、そのアシスタントの女の子についても、会長が編集長さんに「解雇したい」と打診していたそうですが、編集長さんはここまで何も本人には言わず、彼女を守り続けていたのです。

対照的な2人

ただ、私の「編集局から営業局への異動」という衝撃的な辞令を見て、アシスタントの子が同じような目に合ってはいけないと思ったのかw、すぐに編集長さんからアシスタントの子に「あと3ヶ月経って夏の号が出たところで、この会社を会社都合で辞めて欲しい」と話したそうです。アシスタントの子も、書籍編集部がいなくなり、社内の雰囲気が悪くなったと感じていたそうで、「かえって辞めることになってよかった」と話していたということでした。彼女の場合は、解雇になるまではまだ3ヶ月もありますし、代休も、法定の有給休暇も全部取って辞めるということで、話がついたようです。さすがは姉御気質の編集長さんです。書籍編集部の上にいた、役立たずの編集局長とは訳が違います。

今回のことで、私たちの編集局長への株も相当下がりました。今回の解雇劇の発端となった、文法の乱れたわけの分からないメールを送りつけてきただけで、その後はまったく私たちのためには何もしてくれなかったどころか、「会長ってああいう人なんだよー」と擁護するようなことを言って、カリスマさんの手芸雑誌の編集請負の契約書を作りもせず、「この後どうしたらいいー?」と頼ってくるだけの、情けない人でした。この人も、仕事が遅いのに、いろいろと引き受けすぎているせいで、明らかに仕事が回っていないのでした。しかも、その状態が常だったので、周囲にとんでもなく迷惑をかけているということにも気がついていないのでしょう。

まったく予期していないところから始まった

どうやら打ち合わせ室では、会長と前田さんが書店営業のことで話をしているようです。私が「書店営業のOJTをお願いしたい」と言っていたので、もしかしたら、その相談かな?と考えていました。社内で誰かが打合せをしていたら、その情報をすぐにラインで流します。その傍ら、私のほうは引き続きメール返信をしたり、カリスマさんからラインで問い合わせのあった、問屋さんの担当者のメールアドレスを探したりしていました。

すると11時過ぎごろに、前田さんと打合せを終えた会長が、不機嫌そうな顔で私の席までやってきて、「ちょっと来て」と打ち合わせ室に呼び出されました。私は「書店営業の質問書が戻ってくるのかな」と思い、なんにせよ証拠は残しておかなくてはいけないと、iPhoneの録音をセットし、マイクを上にしてジャケットの腰ポケットに入れました。わざとゆっくり準備して、録音がきちんとできていることを確かめてから、先日もらった書店営業関連の資料とノートを持って立ち上がりました。

会長は「遅い!」と思ったらしく、販売部の内勤の女性をわざわざよこして、早く打ち合わせ室にくるように促してきました。以前の私なら小走りで行くところですが、もはや急ぐ必要はまったく感じません。わざとゆったり歩いて打ち合わせ室に入りました。

会長の手元には、二つ折りにされた紙がありました。私が席につくと、会長はその紙を広げて口火を切りました。

「あなた、A社にメール出したでしょ」といわれました。A社というのは、手芸関連の講座を手広く行なっている会社です。そこの部長さんは、私のメールに対して2度も温かいお返事をくださいました。

私はなにが問題なのかまだわからず、「ハイハイ、出しましたよ」と答えました。

このなんの予兆もない状態から、会長との30分間にわたる「最後のバトル」が始まっていったのでした。

カリスマ姉弟の反撃

さて、「3/20付け解雇で受けるので、不足している2日分の解雇予告手当てと、社保の会社折半分の一部として、断りなく減給し続けた給与額面3%×2年分の返金を求める」としたカリスマさんのメールに対して、会長から以下のような返信がありました。

 

○○(カリスマさんの名前)様

解雇撤回における配置転換の辞令を拒否され、平成29年3月20日付をもって退職する旨、受理いたします。自己退職届の提出を至急お願いいたします。

                       ○○(会長の名前)

 

簡単に言うと、「解雇は撤回したんだから、配置転換の辞令を拒否したってことは、自己都合退社するってことだろ。だったらさっさと退職届出せや!」ということになります。カリスマさんも呆れ果てて「退職届出せってよ!バッカじゃないの!!ホント、最後までムカつくなーっ!」と怒りをあらわにしていました。

会長はまだ、カリスマさんの身内に弁護士がいることに気づいていないようです。ここまで世間知らずだと、ちょっと哀れにもなってきます。まあ、私のほうは「辞令が出たからには配置転換を受けるしかない」と返事していましたし、子持ちママさんとおっちょこちょいな人は自己都合退社したので、カリスマさんにもそれで通用すると思ったのかもしれません。

こんな風で、74歳まで会社経営を続けてきたんだ~という驚きと、こんな代表のもとで仕事してきちゃったんだ~という恥ずかしさで、思わず赤面してしまいました。さて、ここまで勘違いしちゃっているとなると、いよいよ弟さんの登場です。ラインに流れてきた弟弁護士作成のメール文は、さすがの迫力でした。

 

株式会社○○○○○○○

代表取締役 ○○○○様

自己退職届けの提出を要求されておりますが、ご高承のとおり、労働者の同意なくして解雇の撤回をすることは認められません。

そのため、繰り返しになりますが、貴社が通告いたしました平成29年3月20日付け解雇が有効であり、私はその解雇によって退職するものですので、言うまでもなく、自己都合退職ではありません。

よって、当方より自己退職届けを貴社に提出することはできませんので、ご理解下さい。

つきましては、貴社において、本メール受領後3日以内に会社都合解雇である証明書及び離職票を発行して下さい。

また、解雇予告手当不足分及び過去の違法な減給分も本メール受領後3日以内にお支払い下さい。

万一、誠意あるご対応をして頂けない場合には、然るべき法的手続をとりますので、その旨ご承知おき下さい。

よろしくお願いいたします。

 

私たち一般人の出すメールとどこが違うのかと考えてしまいますが、冷静すぎるほどの文章の無駄のなさ、そして「本メール受領後3日以内」という期限に、一般ピープルはビビってしまうのか・・・・やはり本職は違うものです。

このメールは22日のうちに出されたということで、メール受領後3日以内となると、土日になる前の24日までには何らかの手を打たなくてはなりません。このメールを受け取った時の、「会長の面を拝みたいものだわ~w」とみんな思ったのですが、私たち全員の席が会長に対して背を向けて座る配置なので、残念ながら見ることはできなさそうでした(笑)外側からと内側からの撹乱作戦が始まりました。

 

来週からの営業の仕事に備える

質問書が1枚だけ返ってきた

しばらくすると、私が「黒い雨」に渡した2枚の質問書のうち、倉庫研修の1枚だけが、なぜか会長の手によって戻されてきました。あれだけ会長が「(黒い雨に)聞いてくれ」と言っていたにも関わらず、結局は2人で相談して回答を書いてきたようです。もしかしたら、会長はまだ「黒い雨」になにも相談していなかったのかもしれません。「書店営業の方はいつもらえますか?」と会長に尋ねると、ちょっと不機嫌そうに「この後やるから」と答えました。「24日までに貰えれば大丈夫ですよ」と一応猶予を与えてやりましたw 

回答は「黒い雨」が手書きしていました。「このような倉庫研修を受けたことがあるか」という問いには、「○○社で2週間ほどあります」となっていましたが、この○○社とは「黒い雨」が新卒で入った会社です。新卒であれば、倉庫研修が1~2週間あるのは当たり前でしょう。しかし、社会人経験25年のアラフィフが、倉庫研修に1週間も行く必要があるんでしょうか?

ちなみに、その倉庫会社でパートを募集していたので要項を見てみると「時給930円」w 時給930円の仕事に1週間行って、今までどおりのお給料がもらえるのであれば、こんなにオイシイ話はありません。なので「会社が行けというなら、行ってやろうじゃないの」という気持になっていましたw 倉庫の住所が分かったので、Googleマップで周辺環境を調べ、近くにあるコンビニや、お昼ご飯を食べられそうな公園まで見つけておきました。その公園でご飯を食べられることを思うと、少し楽しみになってきます。

単なる風邪の咳が1ヶ月たっても取れない

ただ、あの解雇を最初に言い渡された1ヶ月前に引いた風邪が、まだ完璧に治りきっておらず、咳がまったく取れませんでした。この日も、自分で買ってきたのど飴をなめたら、その甘味にむせてしまい、トイレで吐きそうな勢いで咳き込み、首から上が赤らんでしまいました。なみだ目でトイレから出てくると、販売部の内勤の女性のNさんが、「大丈夫?よかったらコレどうぞ」とのど飴を差し出してきたので、実はのど飴の甘味でむせてしまったのだと話して、丁重にお断りしました。

とはいえ、来週から1週間、埼玉にある、駅から2キロ離れた、暖房設備のあまりない倉庫に通わなくてはならないとなると、このまま咳が取れないのは不安です。これまでにも咳が1ヶ月ほど取れないことはよくありましたが、来週からは気軽に医者に行かれないような場所へ、朝から晩まで行かなくてはなりませんし、仕事の前後にも医者に行っている時間は取れないでしょう。ましてや、咳喘息や気管支炎になっていたら大変です。そこで、翌日の昼からということで、会社から歩いていける呼吸器内科に予約を入れておきました。

ハンドメイド展のことなど知らんw

引継ぎメールの返信の中には、私が編集部から外れることで「今後はこの出版社との縁が薄くなるかもしれない」と感じる著者さんがおり、この機会にまとめて著書を買っておきたいという方も何人かいました。そこで、著者購入のことで営業局販売部のHさんという女性に話をしに行きました。

すると、Hさんが恐る恐る、掲示板に貼られた辞令を指差して「あれって○○(私の名前)さんのこと?」と聞くので、「そうですよ!」と答えました。さらにおびえたような顔つきで自分のデスクを指差し、「ここに座るの?」というので、「はっはっは!」と笑い、「そこの前田さんと同じ書店営業ですよ」というと、「え、じゃあ、『まえだまえだ』で?w」とHさんは少し明るさを取り戻し、おどけていいました。前にも書きましたが、書店営業の前田さんと私の苗字は同じなので、もしも2人で書店営業に回ったら、文字通り『まえだまえだ』コンビになるはずですw

それで気分が明るくなったのか、Hさんは「それならハンドメイド展も・・・・」と言いかけました。ハンドメイド展というのは、一般のハンドメイド作家の方たちから作品を募り、ギャラリーに展示する、この出版社が主催している催しです。ここ3年ほど連続で開催していて、今年も開催する予定でいるようです。Hさんが中心となって進めていることから、すでに銀座のギャラリーを押さえてあったのです。

しかし、例年は書籍編集部がHさんを全面バックアップしており、一次審査から、送られてきた作品の保管、二次審査での各賞や順位の決定、ギャラリーへの搬入や搬出、開催期間中の現地での店番はもちろんのこと、上位50作品の作品集書籍や1位作家の書籍編集と、ハンドメイド展には最初から最後までベッタリと関わっていました。

今回の書籍編集部解散で「ハンドメイド展はどうなるのか?」とHさんは不安に思っていたところに、私が営業局に異動となっても会社に残ると聞き、「1人は確保した」と思ったのかもしれません。しかし、会長は私を辞めさせたくて営業局に異動させたのだし、私も法定有給休暇と会社都合退社をゲットすれば、すぐにも辞めるつもりです。なので、Hさんから「それならハンドメイド展も・・・・」と言われたときには、すぐに「それは分かりませんよ!あっはっは!」と笑い飛ばしました。そんな先まで長居する気は毛頭ありませんでした。