まったく予想がつかないことばかり

週末に回答を想定し対応を決めておく

3/9~3/12までの週末は、うちの子どもの少し早めの誕生日会をしたり(本当は3/13)、引き続き転職活動をしたりしました。このまま3/20で解雇となれば、正社員の身分はあと1週間ほどしかありません。しかし、私が探し始めたときの目ぼしい求人は、締め切り間近のものが多く、駆け込みで「正社員」や「正社員登用あり」の求人に応募はしましたが、年齢がアラフィフということもあって、すべて書類で落ちました。まあ私が考えてみても、正社員を募集していて、35歳の人と47歳の人が応募してきたら、とりあえず35歳の人と会おうと思うでしょう。しかも、出版関連の求人の応募は大変な競争率です。しかし幸いなことに求人の数は多いので、諦めずに応募し続けることにし、派遣会社への登録もしようと考えました。

申し入れ書を出したということで、通常ならば会社側は「訴えられてしまったら、敗訴するのは間違いない。裁判で給料の半年~1年分を請求されたら大変だ」ということになり、「給料○ヶ月分と有休の消化、会社都合ということで退職してくれないか」というような相談(勧奨退職)を持ちかけてくるはずです。普通の会社なら、さきに勧奨退職を促すところです・・・・。叔父様からも「だいたいどのぐらいの条件で手打ちとするか、みんなそれぞれに妄想して考えておいたほうがよい」とアドバイスがありました。

私が迷うのは「給料1ヶ月分と有休消化、会社都合退職」ぐらいの条件で手打ちにするかです。これが「給料2ヶ月分だったら手を打つんだけれど、1ヶ月分じゃあ、ちょっとな・・・・」と思っていました。でも、「1ヶ月分じゃあちょっとな。やっぱり争うか」とやっている間に、会長がいうように会社が潰れてしまうかもしれない、という恐れもありました。労働審判ならば2ヶ月ほどで決着すると聞きましたが、その2ヶ月すらも危ないかもしれない。それであれば、低めの条件だけれど早めに手打ちにしておく、というのもありだと思えます。

みんなもそれぞれ妄想します。おっちょこちょいな人が「ごめんね料として給料○ヶ月分じゃなくて、3万円とか言い出しそうじゃないですか?」なんて言います。カリスマさんも大ウケして「そんなん出てきたら、『本当に弁護士に相談したんですか?』『それ、マジで弁護士さん?』て聞いちゃうよ!」と言っていました。まあ、会長っていうのはそれぐらい言いそうなドケチです(笑)。みんなそれぞれ、どの条件なら手打ちにするのかを考えて、納得できなければ、そこからは争いだということになりました。

おっちょこちょいな人が「これで給料3ヶ月分出すから・・・・って言ってきたら、会長のこと尊敬しちゃいますね。もしそうなったら、千疋屋にパフェ食べに行きましょうよ!」「私はフルーツサンドがいい!」「それもいいねえ」などと4人でライン上で盛り上がります・・・・。そんな中、子持ちママさんが「まさか解雇撤回しませんよね?」と不安を口にします。私たちは、表向きは「不当解雇だ!」といいながらも、ここ1ヶ月弱の会長からの対応ですっかり嫌気がさし、会長や会社への信頼をすっかりなくしました。もうなるべく早くこの会社との関係を断ち切りたいという気持です。カリスマさんはきっぱりと「とにかく、融資がうまく行かなくて、お金がなくて、人を減らしたくて仕方がないんだから、撤回はありえないよ」と言い放ちました。

はてさて会社(というか会長)の回答は・・・・

会長と私たちの間でこのようなややこしい攻防が繰り広げられていたことを、他の社員が知る由はまったくありません。もちろん、業務委託の話をつっぱねてパワハラにあっている営業の男性にはラインである程度知らせていましたが、会社ではお互いのためにそ知らぬふりです。交渉相手は会社というよりは、74歳の会長たった1人。ただ後ろには腹黒い弁護士と、腹黒い税理士がついています。

やや緊張の面持ちで、会長の待つ打合せ室に4人で入りました。会長の手元には、それほど行数の多くない文章が書かれた紙が、4枚置かれているように見えます。

会長が口を開きました。「先日みなさんから、この解雇について異議があるという文書を受け取りましたので、今回の解雇は『撤回』します」

・・・・・みんな絶句です。まさかまさかの解雇撤回です。こんなことがあるんでしょうか・・・・。会長は、手元にあった解雇撤回の書面を私たち4人に配りました。

さらに会長は続けました。「ただし、書籍部門が赤字で、このまま存続させることができないことは変わりません。そこで、みなさんの配置転換をします。どの部署に配置転換するかは、ここ1週間以内に決めて、みなさんにお知らせします」ということでした。

まさかの展開に、いろいろ準備していたはずの言葉はすべて無用になりました。でもなにか言わなくては、このままでは会長のやりたい放題ではないか。

「では、2900万円の赤字があるという理由での解雇だったのに、本当は人員削減は必要なかったということですか?」となんとか質問をひり出しましたが、「いや、みなさんがこの解雇はおかしいというから、それを撤回しただけです」という、なんとも人を食ったような、ふざけた回答が返ってきました。

カリスマさんも「でも労働局からは、解雇通告後の配置転換は、解雇回避努力にあたらないと言われましたけれど」と質問をぶつけます。すると「だから、『解雇撤回』です。解雇はなくなりました」と答えました。

みんな、変なものを無理やり飲み込まされたみたいな、いや~な感じの表情になり、そのまま話し合いは終了となったので、打ち合わせ室を後にしました。そして誰が言うともなく順番に会社を出て、とりあえず外の喫茶店に集まることにしました。