打つ手はなくなったのか

こんな無茶苦茶が通るのか

喫茶店に集まった私たちは、しばし呆然としていました。子持ちママさんは元より有給休暇を取りきることさえできればいいので、自己都合で辞めて、有休を取りきるための手段を講じればよいということで、結構さっぱりとしていました。おっちょこちょいな人もまだ30代半ばで、解雇を言い渡された週のうちに、転職活動ですでに面接まで進んでいるところがあったぐらいなので、こちらも自己都合で辞めて、有休を取りきるための手段を講じればよい状態でした。

ギリギリと悔しがっているのはカリスマさんです。すぐさま弟弁護士と某ユニオンの叔父様に連絡をしますが、二人ともすぐには返事ができない状態です。私は、配置転換でどんな嫌がらせをされるのかと憂鬱ですが、だからといって何も悪くないのに自己都合で辞めるのには納得がいきません。それに転職先も決まっていませんので、今すぐにでも立ち去りたい会社ですが、そういうわけにも行かない状態でした。

スマホで「解雇撤回」を検索すると、「解雇撤回も労働者側の同意がなければ成立しない」という情報を見ました。それならば、解雇撤回に同意しないという意思表示を、いつまでにどのようにすればいいのでしょう?行き詰った4人が喫茶店で頭を突き合わせていてもしかたないので、とりあえず、これまでに相談にいった労基署と労働局へ相談に行くことになりました。

2回目の労働局へ

子持ちママさんとおっちょこちょいな人と私の3人は、労働局へ向かいました。残念なことに、子持ちママさんの担当のSさんも、私の担当のTさんも、この日はお休みでした。そこで、たまたま手が空いていた女性の担当者Iさんに相談することになりました。

まずは、会社から出た書類、こちらから出した書類を見せて説明します。すると、「解雇が不当だと申し入れて解雇が撤回になったのに、その撤回に同意できないというのでは、補償金を取ることはできないかもしれない」と言われました。しかし、これだけ社員を「解雇だ」→「やっぱり解雇はなしにする」とひどく引っ張りまわしておいて、なんのお咎めもないなんて納得いきません。しかし、こればかりはどうにもならないということでした。

自己都合で辞めるつもりの2人には、もう一度会社側に「解雇は撤回になりましたが、会社も大変でしょうし、私たちを辞めさせたいことはよくわかりました。それならば会社都合ということにしていただければ、有休を消化した日付で退職します」という交渉をしてみてはどうか、というアドバイスがありました。法定の有休を取りますといったところで、その分の給料がきちんと支払われるのかは不安ですが、もし支払われなかった場合は、やはり労基署に訴え出るしかありません。

配置転換はいやがらせ的な配置になることはまず間違いないと思われますが、それも配置されて見なければわかりません。もし嫌がらせがあれば、そのときはやはり労基署に訴え出るしかないわけです。

この担当をしてくれたIさんも、私たちの申し入れ書を見て「この最後のところはもうちょっと違うふうに書けば・・・・」と言っていましたが、後の祭りですし、少し言葉尻を変えたぐらいでは、やはりこの事態になっていたと思います。私が「もし、この配置転換ありきの解雇撤回は同意できないと表明して、あくまで『解雇で結構です』という態度で会社に行かなかったらどうなりますか?と聞くと、「下手をすると懲戒解雇を出されることもありえます。以前にそういう事例があって、結構大変でした」とのことで、これも使えません。「とにかく、解雇を撤回されてしまうことが、一番やっかいです。申し入れをするのは諸刃の刃なんですよね」とIさんは気の毒そうに言いました。

労基署に行ったカリスマさんの方は、ものの5分で相談が終わってしまい、「そうなったら粛々と仕事を続けるしかない」と言われたそうです。もちろん、パワハラや給料の大幅な減額などがあれば、そのときは訴え出てくださいというスタンスでした。

最後の頼みの綱は

その日の帰り道は「まいったなぁ」という言葉しか出てきませんでした。本当にまいりました。でも悔しいので、自己都合で辞めるのは絶対イヤだ。それにしても「とにかく、まいった」というのを行ったり来たりしていました。会長との打ち合わせは、今回もものの5分だったのですが、その後の対策を練ったり、相談に行ったりでグッタリと疲れてしまいました。夕飯を作っていても心ここにあらずです。一体どうすればよかったのだろう?とも考えてしまいます。

そんなとき、弟弁護士さんから返事があったとカリスマさんからラインが入りました。弟弁護士がいうには、やはり「解雇が撤回になったら、解雇はないんだから補償金を取るのは無理。撤回に同意しないといってもいいが、その場合は解雇予告手当ての2日分(2月は28日しかないため、1ヶ月前に予告したつもりだったようだが、30日には2日足りなかった)しか取れない」ということでした。なるほど、確かにおっしゃるとおり・・・・弁護士さんにもこの状況はどうにもできないのだとわかり、さらに絶望しました。

しかしその1時間後に、今度は某ユニオンの叔父様から連絡があったとかで、叔父様がいうには「これは無理だと会社は判断して撤回してきたね。こうなればまだまだ時間はあるし、策もあるからジックリ行きましょう」ということでした。いったいどんな策があるのかまるでわかりませんが、この言葉にどれだけ救われたか!たしかに、こうなったら某ユニオンの方が得意な流れかもしれません。手っ取り早く効率よくどころか、会社都合なのに会社都合が取り付けられない状況なので、じっくりやるしかないのでしょう。